どこまでも散歩道〜志治美世子ウェブサイト



歌仙「十六夜」の巻

[独吟 志治美世子]

十六夜の恋ともなりぬ姥の月
  萩一枝を濡縁に置く
  ゆるく巻く帯に蜻蛉の飛行して
  空耳さえもほら君の声
  いにしへの寝物語に習へども
  殿上人も地下人も葱
孤独とは来ないメールを待つ時間
  四十路もちっちゃな女の子かな
  むき出しの肩出しキャミにあこがれる
  夏を迎えてシェイプアップさ
  筋トレのインストラクター見目良くて
  私はもっと優しげが好き
  木枯しに身をその腕に解き放ち
  滅びと言ひつ再生を言う
  水澄めばふたりながらを映す湖
  残る氷を突く指先
  降り注ぐ花をグラスに飲み干して
  鮎上るごと瀬を分ちゆく
ナオ 蜃気楼あなたは大きく手を振って
  また街角に消える夕暮れ
  ラブホなら愛し合えます三時間
  ポテトつまんでメロドラマみる
  満月も引き摺り下ろす嫉妬なり
  喰らい尽せば肉と血は古酒
  装へば女郎蜘蛛とも成り果てよ
  冬蝶ならば競ひもするが
  伴走は二世の妻に添はれつつ
  視覚障害夫婦円満
  ししむらを深く探りし手も闇に
  熱く融かしたチョコレート飲む
ナウ ゲレンデはチャンス到来告(こく)る刻
  カーニバルには花火打ち上げ
  お帰りの駅は満員御礼で
  どこまで歩く囀りの道
  口づけは花天井のその下で
  桜吹雪も瞬間の永遠(とわ)

発句の「十六夜」が仲秋の季語なので、平成十七年秋に巻いたものだと思われます。

軽く思いつきで、「全部、恋句で巻いてみよう!」と思い立ったのが始まりでした。

ということで、「十六夜」はもちろん「十六夜清心」なのですが、周囲からは「自分勝手〜〜〜!!!」「そんなもの、分かる訳がない!!」「無謀!」「こんなもん、連句じゃない!」等々、罵詈雑言、こてんぱんの“温かきお言葉”の数々をいただきましたっけ!

「いいんだ! やってみたかったんだから!」

という声も虚しく撃沈したことも、今となっては楽しい思い出です。

ここにこの巻を載せましたのは、

「連句作品としては、どんなに未熟なものだっていいじゃない!とにかくやってみたい、と思ったことは、やってみようよ!」

という、わが身の恥をさらしての、連句初心者の方々へのメッセージとなれば、との思いからです。

細かい式目なんぞは、最初はどこかに閉まっちゃって、とにかく自分が「楽しい!」と思えるところから始めましょうよ。ね!


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