どこまでも散歩道〜志治美世子ウェブサイト



歌仙「傷つく力」の巻

[志治美世子 捌]

恋といふ傷つく力冬牡丹 志治美世子
  身のうちに聞く凍裂の音 服部 秋扇
  空四角ポケットパークへ垂直に 古川 柴子
  満月を割る野暮な電線 美世子
  枝々に移動おはりて椋鳥(むく)眠る 秋扇
  銀杏舞い上げバイク鼻歌 柴子
乱闘は西岸目指す敵校 美世子
  交換日記突如高揚 秋扇
  長き髪ギター爪弾くアルペジオ 柴子
  インド好みの衣まとひて 美世子
  透き彫りの影のうつろふ夏の果て 秋扇
  月光あふる冷酒の杯 柴子
  奉納の剣伝へし神話より 美世子
  逝くもゆかぬも靖国の杜 秋扇
  にごり湯の肌をころげて淡き湯気 柴子
  ミルクの匂ふ吾子を抱きつ 美世子
  ふはり浮いて深呼吸する花の雲 柴子
  忘れ物さと山に笑はれ 美世子
ナオ 木遣唄路地裏くねる弥生尽 秋扇
  物見のなかに知った銘仙 美世子
  薄い肩ノラともならず猫を撫で 秋扇
  をのこの手管いつも鮮やか 美世子
  埋み火を掻いて煙草を吸ひつける 秋扇
  醤油芳ばし寒餅を焼く 美世子
  松籟を自在にあつめ放下僧 秋扇
  琵琶語れかし水底の国 美世子
  ほととぎす木霊はいつか言霊に 柴子
  穴まどひする記憶(メモリー)の量 秋扇
  月はいま暗黒星雲より出づる 美世子
  尾越の鴨も転生のとき 秋扇
ナウ 金柑を撒き散らし床ひとり占め 美世子
  喉の薬にジャムを煮詰める 秋扇
  テノールに負けてはならじソプラノは 美世子
  夕陽の木立縞のゆらゆら 柴子
  花幾里紀伊水道に降りそそぎ 美世子
  普陀落クルーズなべて麗らか 秋扇

首尾 平成十七年十二月二十一日
於 志治宅

平成十八年郡上八幡文芸祭連句部門で、「郡上市教育長賞」をいただいた巻です。大先輩の秋扇さんに、柴子さんと私が引っ張っていただいた巻でした。

「恋句が好き!」と公言してはばからない私が、「こんなの、発句には向かないと思うのだけれど・・・」と恐る恐る出した俳句を、秋扇さんが「あら、面白いじゃない! こういうのもいいと思うわ」と言ってくださいました。

本当は、「傷つく力」を「傷つく能力」と書いて、「ちから」と読ませたかったのですが、それではあまりに叙情に欠けると「力」となりました

本当の意味は、「恋をするということは、傷つくことを恐れない能力でもある」という意味だったのですけれど。

まあ、句の説明なんて、なんて野暮なことを!

どうも失礼いたしました。


連句インデックスへ戻る


このページのトップへ


Copyright © Miyoko Shiji All Right reserved.
当サイトに掲載している全ての内容はshiji.jpに属します。
その全て、あるいは一部を無断で使用・転載・引用することを禁じます。